あなたの色に染められて
第41章 あなたの色に染められて
『では 照明を落としてください!』
会場が一気に暗転すると
『りこちゃん!おめでとう!』
トーチを手にして現れたのは七五三のスーツをバッチリ着こなした京介さんの最大のライバル…ケンタと幸乃さん。
『おい ケンタ。俺におめでとうはないの?』
『あるわけないし。っていうか…りこちゃんはオレのだし。』
腕を組み唇を尖らせてジロリと睨み上げるその姿は 正しく一人の女を愛す男の姿で
『残念でしたぁ。もう完璧に俺のですから~。』
はぁ…まただよ…。
エンゲージリングを見せつけて勝ち誇ったようにニヤリと笑い見下ろす京介さんだけど
『あっそ…。』
ケンタはいつものように応戦せず 璃子ちゃんの方を向き真っ直ぐに立つと
『りこちゃん。』
『なぁに?』
同じ目線にしゃがみこむと
『10年後。オレ…むかえにくるから。』
真っ直ぐに璃子ちゃんを見つめて言葉を紡ぐ姿は見惚れてしまうほど
『ケンタくん…。ありがとう。』
璃子ちゃんはケンタをフワリと抱きしめると その耳元で優しく囁いた。
『いつも私を守ってくれて嬉しかったよ。大好き。』
…チュッ…。
それは どんなときも心に寄り添ってくれたケンタへの璃子ちゃんからのご褒美だった。
ケンタはほっぺを擦りながら京介さんに勝ち誇ったようにピースサインを向けて
『璃子…おまえなぁ…。』
こんなチビッ子相手でも本気でヤキモチ妬いてしまう京介さん。
『フフっ…京介くん?』
幸乃さんの意味深な笑顔を向けられると
『わかってるよ!』
拗ねた顔して…ホントこの二人は見てて飽きない。
『それでは!幸せいっぱいの新郎新婦と お祝いに駆けつけてくれたみなさまに この先も明るい光が照らし続けることを願いまして…どうぞ!』
仲良くトーチを握る二人がハートの蝋燭に灯を灯すと
『わぁ…。』
その灯りは柔らかな光を放ちながら揺らめいて
『その蝋燭の灯りのようにこれからも二人の路を照らしてね?』
優しい声で言葉を紡ぐのは璃子ちゃんの憧れの幸乃さん。
『どんなときも手を繋いで二人で乗り越えるんだよ?』
『…はい。』
煌めく蝋燭の灯りが璃子ちゃんの頬を伝う涙をキラリと輝かせ
『…泣き虫。』
その涙を京介さんが優しく拭う。
その光景を目にすると会場から自然と拍手が沸き上がり二人の笑顔をさらに際立たせた。