あなたの色に染められて
第41章 あなたの色に染められて
『…らしくねぇなぁ !』
俯き 涙の痕を隠す京介さんに 一番後ろの席から私たちを眺めていた佑樹さんが大きな声をあげた。
『おまえオレ等のキャプテんじゃなかったっけぇ?』
京介さんは小さくフゥと息を吐いて苦笑いすると頬を乱暴に腕で拭きながら
『…ったく。うるせぇ!バーカっ!』
…もう…本当に私のダンナさまは素直じゃないんだから。
『ギャハハ…バカじゃねぇだろ!バカじゃ!』
指を差し お腹を抱えて笑う佑樹さんの声が響くとシンミリと静まり返った会場がまたあたたかな笑顔に充たされる。
『オレ…マジでみなさんに感謝してます!』
やっと思いの丈を伝えることができたのは 野球をこよなく愛し たくさんの仲間に囲まれた私の愛しいダンナさま。
『…俺たちは幸せ者だな。』
『…ホントですね。』
見渡せば私たちはこんなにもたくさんの人たちに支えられて…祝福されて。
満足げに微笑むダンナさまと視線が重なれば 繋いだ手を誰にもわからないようにギュッと絡めあって
…きっと これが本当の幸せって言うんだろうね。
繋がれた手はもう決して離れることなく 進むべき道に私を導いてくれる。
もし その道が間違っていたとしても私は大丈夫。
この世で一番愛する人と添い遂げられるんだもの。
どんなに険しい道でも苦しい道でも この手に守られてるんだって思えば何だって出来るんだから。
***
和やかな雰囲気のなか
『京介?なんか忘れてねぇか?』
長谷川さんの変に優しい声が響き渡ると
『…野球部恒例の誓いのキスはどうした?』
…忘れてた。野球部の伝統行事。
『…やっぱりするんです…よね?』
『…こればっかりはな。』
美紀のときも二次会でしっかり10秒させられたって溜め息混じりに言ってたっけ。
『よ~し!カウントダウンいくぞー!しっかり10秒だからな!』
有無をも言わさず始まるカウントダウン。
まだ覚悟を決めていない私の頬に京介さんの大きな手が添えられる。
…悔しいなぁ…この眼差しには敵わない。
『5.4.3.2.1…Congratulations!』
…見せつけてやろうぜ?…
囁かれれば自然と重なり合う唇。
ねぇ京介さん…
花嫁が真っ白なドレスを身に纏う理由知ってる?
それはね
…あなた色に染めてください…
ってことなんだよ。