あなたの色に染められて
第42章 epilogue
二人にとって大切な夜。
ドキドキするだなんて言いながら顔を真っ赤に染めて恥ずかしそうに俯くその姿が愛らしくて俺の頬は自然とほころんだ。
もしかしたら俺も緊張していたのかもしれないな。
そのお互いの緊張を少しでもほぐすようにガキみたいな質問をしたオレ。
でも 聞いたことをすぐに後悔することになる。
璃子の口から溢れ出した想いはひとつひとつ丁寧に紡がれ俺の心を締め付けて
こんなにも愛されてたんだと心が震えるようなそんな感情に満たされた。
『ねぇ…私も知りたいな…。』
華奢な腕を首に廻しながら俺の心を覗き込もうとするその愛らしい瞳。
俺の方こそ その汚れのない澄んだ瞳に心を奪われてるっていうのに
『聞かなくてもわかるだろ?』
込み上げる何かを見透かされないようにぶっきらぼうにそう答えてしまうオレ。
逃げるように首筋に唇を這わせてことを始めようとするけど 今日の璃子は見逃してはくれなかった。
『ズルいですよ?ちゃんと教えてください。』
さっきまで頬を真っ赤に染めて恥ずかしがっていたコイツが今は唇を尖らせて催促する。
『ハイハイ…じゃあ全部?』
『あっそんな言い方…私ちゃんと言ったのにぃ…。』
今度は大きな瞳でジロリと睨み付ける。
その瞳に視線を重ねると璃子は頬をピンク色に染めて遠慮がちに
『ひとつだけで良いから…知りたいな…。』
本当にコイツは自分のこととなるとすぐにこうなる。
『ひとつだけか…なら教えてやるよ。』
『…うん。』
璃子はこの暗い部屋の中でもわかるほどキラキラと目を輝かせて俺が紡ぐ言葉を待っていた。
『…キス。』
『…え…。』
『おまえのキスだよ。』
『…んっ…。』
柄にもなく泣いてしまいそうなダサい俺の顔をおまえに見せるわけにはいかなかったし
ひとつひとつ挙げてたらそれこそ夜が明けてしまう。
だってそうだろ?
おまえのすべてに惚れてんだから。
『…ズルい。』
『じゃ答え合わせをしようか?』
『答え合わせ?』
また 首を傾げて目を丸くして
『おまえのすべてが好きなこと 今から教えるから。』
お互いの想いが重なった瞬間…それは瞳が重なった瞬間だった。