あなたの色に染められて
第9章 jealousy
「そのうち知ると思うんだけど…」
嫌な前振りだった。
「直也から聞いた話によるとあの二人昔付き合ってたらしいよ。」
『…そか。』
なるほどなと意外にも冷静に話を聞く私がいた。
「高2ぐらいから始まって大学も同じとこ行って、社会人になって遥香さんが名古屋勤務になったのがきっかけで自然消滅したみたい。」
ずいぶん長い付き合いだったんだ。
それに自然消滅か…
『イヤになって別れたわけじゃないんだね。』
「そういうこと。気持ちが残ったまま再会って可能性もあるわよね。でも離れてもう3年でしょ? 」
やけぼっくりに…ってことなんだろうな。
…ダメじゃん私
この話を聞いて私に勝ち目があるって思える人はどれだけいるんだろう。
大きく溜め息をついてなんとか心を保つ
『こういうときって私から別れ話をした方がいいの?』
「アンタなに言ってんの?」
美紀は急に声を荒げて
「勝手に別れるって思ってんじゃないの!よく思い出してみなさい。アプローチされたのだって京介さんからだったでしょ?」
『そうだけど…』
「それに 私 ちゃんと大切にするって京介さんから聞いたよ?」
美紀の気持ちは嬉しかったけど
『でもさ、見たでしょ?彼女私と反対の世界にいる人だって感じなかった?私よりずっとお似合いだって思わなかった?』
彼を信じたくても実際に目にしてしまった私
『京介さんの隣が似合うのは私じゃないって 元カノとか知らなかったのに感じたの。』
そうなんだ。
「璃子?勝手に決めつけちゃダメだよ。ちゃんと話し合ってごらん。」
『…イヤだ。』
だって話し合ったら…
「とにかく話なさい。もし京介さんが理不尽なこと言ったら私許さないから。」
いつだって美紀はなんにも出来ない私の味方をしてくれる。
「ほら。明日大事なカンファの用意があるんじゃなかったっけ? ミスするとまた川野先生に怒られるよ?」
『ありがとう。』
*
『…ダメじゃん私。』
美紀との電話のあと 何度も京介さんから連絡がきた。
でも 出れなかった。
だってスマホが鳴り響く度に別れを告げられるんじゃないかと怯えていたから
6年と3ヶ月
『勝てるわけないじゃん。』
私の方が面倒くさいオンナだった。