あなたの色に染められて
第9章 jealousy
あれから一週間
『お先に失礼します。』
半日で帰ることができる土曜日の昼下がり
いまだに京介さんからの連絡を拒んでいる私は、空を見上げながら家路へと足を早めた。
『雨降りそう。』
京介さんは明日の決勝戦に備えて練習しているはず。
…もう関係ないか
きちんと話さなければいけないのはわかっていたけど 何をどう話したらいいのかわからなかった。
だって私はあの二人の間に入れない
『傘持ってくればよかったかな。』
私はホントに面倒くさいオンナだった。
駅までの道をいつものように歩いていると一台の車に目が止まる。
…なんで
その車に凭れ掛かるように立っていたのはTシャツにカーディガンを羽織ったが京介さんだった。
『…璃子。』
久しぶりに逢った彼はバツが悪そうに微笑んで
『少し話せるか?』
遠慮がちにそう尋ねた。
…逃げられない
私はコクりと首を縦に振り彼が開けてくれた助手席に座る。
…イヤだな
座ってすぐに感じるこの違和感
な
私はこんなにシートを倒さない。
…午後も働けばよかった。
動き出し
私は膝に抱えているバックを見つめていた。
*
連れてこられたのは球場近くの公園の駐車場
結局車の中では言葉を交わすことはなかった。
『…はぁ。』
京介さんはハンドルに額を預けると
『…ゴメン。』
私の大好きな掠れた声で謝った。
…謝るってことはやっぱりそういうことだったんだ。
覚悟はしていたけどキツいっていうか、苦しい。
それなのに
…え
彼は私の手を握って
『…遥香のこと俺のなかではちゃんと終わってるから。』
考えていたことと反対の言葉が耳に届く。
『美紀ちゃんから聞いたよ。そんなに悩んでたんだったら直接聞いてくれればよかったのに。』
なんだろう。
『もう関係ないから。機嫌なおしてくれない?』
その少し余裕のある言い方が違う感情を胸に沸き立たせる。
待っていた言葉を贈られてるのに胸がモヤモヤする。
…違う
そして 私はバックをギュッと握ると止せばいいのに
『…別れてたら何やってもいいんですか?』
…バカだ
『助手席に座るのは彼女じゃなくて元カノなんですか?』
ダメだ…
『迎えに行くのは彼女じゃなくて元カノなんですか?』
…止まらない
『…おまえなぁ。』
ううん、止められなかった。