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あなたの色に染められて

第9章 jealousy


『京介さんの“モノ”になるとこんなに苦しい思いをしなきゃいけないんですか?』

ほらね、言ったでしょ?

あなたは恋愛上級者で、私は恋愛初心者

困らせますよって、面倒くさいですよって一番初めの日に言ったよね。

あのとき 絶対に嘘はつかないって、面倒くさくていいって言ったのは京介さんだったはず

『私は京介さんのなんなんですか?』

溢れる涙を乱暴に拭きながらどうしたらいいのかわからずただ必死に言葉を並べた。

カチッ

京介さんが私のシートベルトを外し繋いでいた手をグッと引き寄せて

『悪かった。璃子の気持ちもっと大事にしなきゃいけなかったね。』

…京介さんの香りだ。

『離してください。』

この腕に包まれたかったんだ。

『許してくれるまで絶対に離さない。』

さっきよりも強く胸に抱かれると 彼の鼓動が聞こえてくる。

『…逢いたかった。』

『…嘘です。』

『嘘じゃねぇよ。俺 おまえが居なくなったらって考えたらバットも触れなかったんだぞ?』

それは野球少年の一大事だ。

『私、背だって低いし、モデルみたいなキレイな体型じゃないし…』

『そんなの知ってるよ“オレの”だから』

私の頬を大きな手が包みこみ視線を重ねると

『俺はここにすっぽりと納まって 何度も触れたいって思うほど柔らかな肌を持つおまえが好きなの。だから ムシなんかするなよ。マジで。』

親指で私の涙を拭いながは微笑む彼

『本当に悪かった。俺のせいで風邪もひかせたみたいだし。ダメだな…オレこそ彼氏失格だよ。』

彼の瞳に映るのは涙を流し続ける不細工な私

『私…迷惑かけるって…面倒くさいっていったじゃないですか。』

やっと彼の背中に腕を回せた。

『迷惑いっぱいかけて。俺は何があったって絶対におまえを裏切らない。』

強くて優しい焦げ茶色の瞳

『遥香さんのこと聞いてもいいですか?』

嘘をつかないと宣言した京介さんに私は思い切って聞いてみる。

『いいよ。璃子が安心してくれるまで何時間でも話すよ。』

背中に回された手が私の背中を優しく擦る。

『…京介さん』

一度は諦めようとした恋は まだ辛うじて繋がっていた。

その糸を太くすることができるのはお互いがどれだけ信頼しあってるかってこと

私は大きく息を吐くと京介さんの瞳を見据えた。

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