あなたの色に染められて
第11章 ご挨拶
『遅くなってゴメンナサイ!』
病院の駐車場で待っていてくれた京介さんの車
『お疲れ。』
朝からフル回転だった私は案の定 定時で終わることも出来なくて 一時間遅れの18時にやっと車に乗り込んだ。
『忙しかったの?』
『はぃ、すいません。』
『月曜はどこも忙しいもんな。』
シートベルトを締めて顔をあげると
…チュッ
京介さんが身を乗りだし軽くキスをくれた。
『おかえり』
『…ただいまです。』
不意打ちのキスは私はまだ慣れない。
『腹減ったろ?久しぶりに夏樹さんとこに行ってみようか?ちゃんと報告もしたいし』
そこは京介さんと初めて二人だけで行った大切な場所。
『そうですね。 優勝しましたもんね。』
『おまえなぁ…優勝の報告してどうすんだよ。俺らのことだっつうの。』
あの日のお食事のあとにお付き合いを始めたんだ。
*
『いらっしゃい。』
テーブルについてオーダーすると夏樹さんが挨拶に来てくれた。
『璃子ちゃん、こんばんわ。』
『こんばんわ。お久しぶりです。』
この間と一緒。目尻に優しいシワを寄せて
『もしかして、二人で来たってことは…?』
私たちの顔を交互に見ながら
『やっと俺のモノになりました。』
ニカッっと得意気にピースなんかしちゃって
『ハハハッ。良かったな、京介。って言うか、璃子ちゃん本当に京介でいいの?』
この間は付き合ってやってくれなんて懇願されたのにね。
『はい。 』
微笑む私たちを見て夏樹さんは
『アフォガードな訳ね。』
大人の苦味と甘いバニラアイスのハーモニー
『だから なんの意味?』
拗ねたように問いかける京介さんにそう言えばこの間答えを教えていなかったことを思い出す。
『まだ話してないの?』
『…はい。』
『純真無垢な璃子ちゃんをちょっと大人な京介が包み込んでるって言うの? 守ってやってるって言うのかな?お互いが溶けて交わるってこと。』
『ふーん じゃあ、璃子は俺色に染まるってことか。』
ニヤリと笑って
『そういう言い方しないでください。』
『あのとき本当にビックリしたよ。京介が穏やかな顔してたからな。大事にしろよ?』
『わかってます。だから夏樹さんに逢わせたんですから。』
私は今日も京介さんから幸せを分けてもらった。