あなたの色に染められて
第11章 ご挨拶
『うーん。おいしぃ!!』
ハズレなし。何を食べても頬を緩ませてしまうこのお店。
『璃子は食ってると本当に幸せそうな顔するよな。』
『だって幸せですもん。』
もうすでに4品目のパスタを頬張る私
『だろうな。』
先に食べ終わった京介さんが頬杖をついてニコリと微笑むと
『璃子はその…欲しいもんとか行きたいとことかないの?』
『ん~。ありませんねぇ。』
私はすぐに答えを出す。
『どうしてですか?急に。』
『いやオレ…おまえをどこにも連れてってねぇだろ。野球行って俺ん家に来て飯食って、たまに夏樹さんのとこだろ?昨日みんなに璃子が可哀想だって怒られた。』
そういえば お出かけデートって夏樹さんのお店に来るぐらいしかないかも。
『別に私は楽しいですよ。野球見に行くのも京介さんのお家でのんびりするのも。でもそれじゃあダメってことなんですか? 』
『ダメじゃなくて、璃子は言わねぇなぁと思ってさ。』
…行きたいとこか
私は京介さんと同じ時間を共有できたらそれでいいのに
『よし!決めた!今度の日曜日は接待だから、再来週どっか行くか? 』
嬉しくて胸が高鳴るけど
…ダメだ、その週は札幌だ
『…ゴメンナサイ。再来週の水曜日から一週間…その…先生と学会に行かなきゃいけなくて…』
『学会?誰と?』
一瞬で目の色が変わる京介さん
『心臓外科の川野先生…』
ただならぬ雰囲気に私はゴクリと唾を飲む。
『そいつ確か男だよな?まさか二人じゃねぇよな?』
イスに深く凭れて腕を組み、尖った視線を私に送る
そうなれば私はフォークを下ろし膝に手を置き白状するしかない
『そのまさかで…』
『はぁ? なんで璃子と二人なわけ?有り得ねぇだろ。』
今度はテーブルに肘をつきテーブルをコツコツと指で叩き出す。
『…じ…事務長にも聞いたんだけど…』
『で?』
明らかにイライラしはじめて
『…ハハハッ…』
もう 苦笑いするしかない私
『一週間他の男となんてマジで胸くそ悪い。』
京介さんはデープルに両肘をつき頭を抱えて溜め息の嵐…
『…ごめんなさい。』
謝ったって仕方がない。
『…京介さん?』
『…ハァ…』
だってこれはお仕事なんです。