あなたの色に染められて
第11章 ご挨拶
『ハァ…』
お店から空気がなくなってしまうんじゃないかと思うほど 京介さんは溜め息を漏らし続ける。
『そんなに怒らないで下さいよ。私だって行きたくないんですから。』
目の前には大好きなウニのクリームパスタ冷めていく
もぉ どうしたらいいの…
『怒ってねーし。』
怒ってるじゃん
『考えてもみろよ、俺んちにだってまだ1回しか泊まってねえのに なんでそいつと一週間?』
今度は拗ねてるし
運ばれてきた食後のコーヒーに砂糖を少しだけ入れてもうずーっとかき回してる
『だから仕事なんですって!』
『ハイハイ…仕事ですよね。』
もう完全におへそが曲がっちゃってるし
『あの…』
もうこうなったら思いきっちゃう!
『あ?』
『今度の土曜日って野球ですか?』
『休み。優勝したから。』
なんだよ…
『土曜日…私、久しぶりにお仕事お休みなので金曜日に仕事終わったら京介さん家に行ってもいいですか?』
なんか 私からこんなこと言うなんてメチャメチャ恥ずかしいんですけど…
『無理。俺帰り22時ごろだし。』
もう!わかんないかなぁ。
『…だからその…お泊まりしちゃおうかなぁ…なんて。』
…いけるか?
ずっと回しっぱなしだったスプーンがスッと止まると顔を上げて
『それはダメ。璃子のご両親に挨拶もしてねぇのに。泊めるとか俺はムリ。』
予想外の返事…
『…えっ、美紀ん家に泊まるとか言えば大丈夫です!それにこの間もお泊まりしたじゃないですか。』
『…ハァ…』
大きくため息をつく彼はさっきとは別人のように優しい顔をして
『璃子忘れた?俺がウソ嫌いなの知ってんだろ?
泊まってくれたらすげー嬉しいけど。でも嘘ついてまで来るのはダメ。』
『…京介さん。』
私の頭に優しく手をポンと置くと目をまっすぐに見て
『近いうちにご両親に挨拶に行かせてよ。ちゃんと公認してもらってからでも遅くねーだろ。』
素直に嬉しかった。
『ちょっとイジメすぎたな。土曜日迎えにいくから行くとこ決めとけ。』
…私のことちゃんと考えてくれるんだ
『…はぃ。』
頭に乗せられていた手が私の小さな手を包み込む
『やっぱ、納得いかねぇな。』
これも大事にされてる証拠かな。