あなたの色に染められて
第11章 ご挨拶
土曜日のお昼前
『ダメだ…マジで緊張する。』
京介さんを駅までお迎えに来た私
『オレ変な格好してない?』
『大丈夫です。』
ブルーのボタンダウンにベージュのチノパン、そして紺色のジャケットをパリッと着こなす彼は爽やかを画に描いたような好青年。
『格好いいですよ。』
私から京介さんの手を繋ぐとその手から緊張感が伝わってくる。
『あぁ…口から心臓でそう。』
『急でしたよね。ごめんなさい。』
やっぱり親に会うのって緊張するもんね。せっかくのお休みなのに…と少し早まったと反省すると
京介さんは私を見下ろしてニコッと笑い
『いや、こういうのは早い方がいいんだって。誘ってもらって結果オーライだろ。』
なんて私を気遣ってくれる優しい京介さん
『でも…さすがにこれは思ってた以上に緊張するな。』
いつもは車で送ってもらう道を二人で手を繋いで歩くと
『…着いちゃったな。』
門の前に立ち二人で大きく深呼吸して
『ただいま~。』
『いらっしゃーい。あらスゴいイケメンさんじゃないの~。』
ママの笑顔が私たちの心を少し穏やかにする。
『はじめまして…おじゃまします。』
『さぁ、あがって。パパが首を長ーくしてお待ちよ。』
あんなに緊張してたのに
『はじめまして、璃子さんとお付き合いをさせていいただいております 森田京介です。』
さっきまでの雰囲気を一切消して ピシッと頭を下げる姿に私は見惚れた。
『これ…お口に合うかどうか…』
『おっ。ここの酒蔵のは美味しいんだよな。』
『ありがとうございます。』
パパの大好きな日本酒を差し出した。
するとそれが円滑材になったのかパパと京介さんは仕事の事や野球のことを話しはじめて
『良かったわね。』
それを横目にママと私は食事の用意をしていた。
『いい人じゃない?』
『そう?ママはいいと思う?』
『あの挨拶を見ればわかるわ“礼にはじまり礼に終わる”って 言葉知ってるでしょ。変に媚びるわけでもなくパパの前でまっすぐに挨拶した後ろ姿は立派だったわよ。』
『うん。』
ママも私と同じように感じてくれたんだと胸を撫で下ろすと
『ママは賛成よ。大切にしてもらいなさい。』
『ありがとう!』
初めて紹介した初めての彼氏。
ママからのお墨付きをいただいて私はまたひとつ幸せをもらった。