あなたの色に染められて
第12章 学会
『はい。出来上がりましたよ』
『うわぁ。すごーい!』
姿見の前に立ち 一回りしてみる。
淡い色のパールを基調としたアクセサリーが私の肌を一段と白く見せて
『……私じゃないみたいですね』
壁に寄りかかり 腕を組んで 鏡越しに笑ってる先生に話しかける
『色が白いから 黒いドレスが映えますよね。まだお若いのでメイクもほとんどしてないんですよ。』
『…フフっ…孫にも衣装だな』
『……すぐにそうやって!』
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『璃子。今日は先生禁止な。』
『えっ?じゃあなんて呼べばいいんですか?川野さん?』
タクシーの中でパーティでの話を聞く
『下の名前で呼べ。』
『……私。…知らないです …先生の下の名前。』
『ハァ?お前 俺の担当じゃなかったっけ?信じらんねぇ。』
『そんなこと言われても ……しょうがないじゃないですか!』
はぁ。先生はまた大きなため息をついて 私に体を向けて
『達哉。川野達哉です。31歳。独身です。心臓外科医です。よろしくお願いします。』
『……うふふっ……31歳なんですか? 』
『…悪かったな。おじさんで
……お前さぁ。今日は頼むよ。マジで。』
苦笑いをしながら
『カニ食わせねーぞ!』
『それは……頑張りますよ!北海道来たんですからカニは食べたいですから!!』
『じゃ、俺の名前は? せーの。』
『たつや……さん///』
少し恥ずかしいんですけど…
『忘れんなよ。頼んだからな。
あっ。でも 楽しめよ。英語もな。』
私の肩をポンと叩いて 微笑んだ。
昨日の先生はなんだったんだろう。
あのときの先生の顔が脳裏にチラつく。ブルブルと頭をふって “忘れるんだ!”念じてみる。
先生は足を組み 窓に肘をついて窓の景色を眺めていた。