煩悩ラプソディ
第10章 星に願いを/AN
「あ、にの。さっき相葉さんが泣きながらお前のこと好きって言ってたよ?」
松潤がバスから降り際に、告げ口をするように笑いながらそう言い放っていった。
「いや夢だから!夢の話だからね?」
なんだか妙に気恥ずかしくなって、慌ててにのに向かって言い訳がましく弁明する。
「え、夢に出てきたの?俺ギャラ高いよ?」
おどけた顔で"はい"と手の平を俺に差し出す素振りをみせる。
寝起きのくせに軽くボケをかますあたりにのらしい。
そのいつも通りの様子に言い知れない安堵感を覚える。
「…あ、そういや」
ふあっと欠伸をひとつして、にのがこちらを見つめながら続けた。
「俺ね、さっき自分が死ぬ夢見てさぁ…
すんごいリアルでね。
相葉さんすげぇ泣いてたよ?」
その言葉に、思わず息を呑んだ。
…え?
「全身に線が繋がっててさ…
ほらあの、ピコピコ鳴る機械もあって」
いや、それって…
「で、相葉さんずっと俺のこと呼んでて…
けど全然答えらんなくってさ」
夢の中のセリフ、場面。
そのひとつひとつが鮮明によみがえる。
「…相葉さんごめんね、って思いながらさ…
死んじゃった、俺」
静かにそう言い終えると、切なげに眉を下げて薄く笑った。