煩悩ラプソディ
第10章 星に願いを/AN
「相葉くん疲れてんじゃない?
ずっとうなされてたよ?」
同じ列の座席に座っている翔ちゃんが、眉を下げて笑いながらこちらを窺い見る。
「うなされてると思ったら、泣きながらにのに告るんだもん。どんな展開だよ」
なぁ?と、前の座席から半身を出している松潤を見上げて。
「ほんとほんと。にのもさっき寝ごと言ってなかったっけ?」
ニヤっと笑った松潤の視線の先を辿ると、数席後ろの端の席に座り窓に凭れて眠っているにのがいた。
その安らかな寝顔は、ついさっきまで病院のガラス窓の向こうにいたにのを彷彿とさせる表情で。
瞼の裏に焼きついて離れない最期を思い出し、また胸が熱くなった。
「相葉くん…?大丈夫?」
にのから視線を外せずにいると、心配そうな声で翔ちゃんが声をかけてくる。
「…ん、ごめん。大丈夫」
涙の跡が乾いて引きつる頬を緩くつまみながら、妙にリアルだったさっきの夢が頭からまだ離れない。
ーー夢で、良かった…。
ロケバスがゆっくりと旋回して止まり、次のロケ地に到着したことをスタッフから告げられる。
揺れが止まったのと周りが動き出した空気に気付いたのか、にのがもぞもぞと身動ぎだした。