煩悩ラプソディ
第10章 星に願いを/AN
同じ夢…見てたの…?
その儚げな顔を見ると堪らなくなって、座ってるにのに近づいて頬を両手で包みこんだ。
「にのっ…」
「え…なに?」
突然のことに驚いて身構えるにのを、そのままジッと見つめる。
この目も、
この鼻も、
この口も、
この声も。
これがリアルで、
今、触れているのは…
紛れもない本当のにのだ。
「…どこにも行かないでよ」
ポロリと出た言葉は震えていて。
…もう、あんな思いをするのはごめんだよ。
「…なに泣いてんのよ、もう」
そう言って俺の頬を両手で緩くつまみながら、困ったように笑う。
「…行かないよ、どこにも」
優しくて、それでいて強さのある眼差しで俺をまっすぐに見つめて。
「ほんと…俺がいないとダメなんだから」
頬をつまんでいた指にキュッと力を込め、いたずらっぽく目線を上げて笑った。