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煩悩ラプソディ

第11章 始めの一歩/SA






卵を溶きながらぼんやり物思いに耽っていると、玄関のチャイムが軽くこだました。


居間の時計に目を遣れば約束の時間の5分前を差していて。


「あ!じゅんくんきたー!」


かずが星の飾りを持ったままパタパタとキッチンを横切って玄関へ走る。


慌てて俺もその後を追い、かずが背伸びしてドアレバーを開けると潤君の小さな姿が見えた。


「かずくん!きたよー!」


つい一昨日まで一緒だったのに、まるで何年振りかの再会のように二人はキャッキャッとはしゃいでいる。


その後ろから遠慮がちに顔を覗かせた櫻井さんと目が合った。


「あ…どうも、今日はお世話になります」


にこっと爽やかな笑顔を向けて軽く会釈される。


いつもと変わらない笑顔だけど、なんだか妙に照れくさくてどぎまぎしてしまう。



…俺だって、かずに負けないくらいこの日を楽しみにしてたんだから。



「あ、どうぞ!あの、こんな狭いとこですけど…」


エプロンで手をゴシゴシっと拭いて櫻井さんを部屋へと促す。


うちは公営住宅だから親子二人なら丁度いい空間だけど、久々にお客さんを招くとやっぱり狭く感じる。


昨日急いで部屋を片付けといてよかった。

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