煩悩ラプソディ
第11章 始めの一歩/SA
「あの…今日はシュークリームじゃなくてこれを」
櫻井さんが差し出したのはいつもの洋菓子屋の袋。
その形から、クリスマスケーキだと分かった。
「わっ、すみませんこんな!
ありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそお邪魔させてもらって…
ほんと、潤も楽しみにしてたんです」
すでに居間でクリスマスの飾りつけの続きを始めている二人に目を向けたあと、櫻井さんがテーブルへと視線を戻した。
「これ、相葉さんが全部…?」
テーブルに並べられた、ハンバーグ、ポテトサラダ、コーンスープを眺めて、感嘆の声をあげる。
「あ、えぇまぁ…。
キッズメニューばっかりですみません」
「そんな!すごいですよ、こんなにたくさん…」
率直に褒めてくれる櫻井さんを直視できなくて、照れを隠すようにコンロへ振り向いて火を点ける。
「あとオムライスの卵だけなんで、子どもたちと…」
「えっオムライス!?
僕大好きなんです、オムライス!」
一際大きくなった声に驚いて振り返れば、目を輝かせた櫻井さんが。
何も言えずに固まっていると目の前の顔が段々赤くなっていった。
「…あ、すみません…
ついテンション上がっちゃって…」
手で口を覆いながら目を泳がせるその姿に堪らずぷっと吹き出す。
「…良かったです、オムライスにして」
卵をフライパンに流し込みながら緩む頬を抑えられない。
ふふ…こんな可愛らしいところがあるんだ。
ほんと、頑張って準備して良かった。