煩悩ラプソディ
第2章 僕の目が眩んでるだけ/ON
「…え?」
「や、さっきからずっと見てんじゃん、こっち」
チラッとこちらを見て、またすぐ画面に視線を戻す。
挙動不審な俺の様子に、にのが気づかない訳がなかった。
やば…!
えっと…
「…あ、あぁ…あの、
ほら、今週の運勢やぎ座1位だって、」
「俺ふたご座ですけど。
やぎ座は相葉さんでしょうよ」
慌てて雑誌を開いて見せながらそう言うと、間髪入れずに的確なツッコミが不機嫌そうに返ってきた。
ごまかそうとして咄嗟に出た言葉でまんまと墓穴を掘ってしまい。
「…あ、ごめん、そうだっけ、」
所在なさげに開かれた雑誌を閉じつつ、引きつった笑顔を浮かべる。
にのは冷ややかな視線を一度送り、ふうっと長い息を吐いた。
「…ま、いいけど、」
そう言ってゲームのスイッチを切り、ソファにそれを投げ出して両手を上に伸ばしてグンと伸びをした。
う〜ん、と言いながらギュッと瞑られた目と、突き出された唇に思わず目がいってしまう。
…あ、かわいい。
なんの違和感もなくそう思った自分にハッと我にかえる。
…いや待て!
なに考えてんの俺!
にのだから!
常に頭をよぎる夢の中のにのと目の前に居るにのがシンクロする。
それをなんとか打ち消そうとする理性とがぶつかって、もう頭の中がグチャグチャになりそうだった。
「ふぁ…ねむ…」
あくびしながら目をゴシゴシ擦り、トロンとした眼差しでこちらを見るにのと目が合う。
そのまま視線を外せないでいると、ゆっくりとその顔が近づいてきた。
…え!?
や、ちょっと待っ…
一気に心臓が高鳴り体中の熱が上がったかと思うと、急に太ももあたりが重くなった。
見ると、にのが俺の太ももに頭を預けて仰向けで目を閉じている。
「おわっ…!」
突然のことに驚いて思わず飛び上がってしまった。
ただでさえ太もも辺りは弱いのに、にのに膝枕するなんて今の俺には到底無理。
「いって…いいじゃん、ちょっと貸してよ…」
膝枕が突然動いたせいで首が前に折れたにのが、顔をしかめて呟く。
「…すっごい眠いの…いま…」
言いながら、目を閉じてお腹側に顔を向け俺が動かないように右腕を腰に回してロックした。