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煩悩ラプソディ

第14章 恋も二度目なら/SA






新しい生活は俺にとっては久し振りすぎることが多すぎて。


誰かと食事をするとか、灯りの点いた家に帰ってくるとか、逆に帰ってくるのを待つとか。


妻も潤もずっと入院していて一人に慣れていたせいか、こんな当たり前のことがひどく懐かしく感じられて。


改めて"家族"という存在の大きさを身をもって実感して、はや一ヶ月が過ぎようとしていた。



ただ、ひとつ気がかりなことがあって…



テーブルに置かれた皿のラップを取りながらぼんやり考える。



確かに俺たちは家族なんだけど…


その前に、俺にとって相葉さんは特別な存在なんだ。


自惚れるわけじゃないけど、多分相葉さんも同じように想ってくれてる。


だけど…
今の俺たちは、日々の生活に追われてそんなことを考えてる余裕がなくて。


お互い仕事もあるし、決まってどちらかが病院に見舞いに行ってるから帰ってくる時間はいつも疎らで。


そして今朝のように俺が起きる時間と入れ違いで相葉さんが出て行く。


愛だの恋だの言ってる暇なんて正直ないんだ。



…でも、俺だって男なわけで。



ひとつ屋根の下に居るのにひとり悶々と過ごす夜だってある。



相葉さんは…どうなんだろう?


俺のこと…ほんとはどう思ってる?


…って、いい歳の大人がこんなこと考えてるなんておかしいよな。



チン、とトースターから合図が聞こえてふっと我にかえる。


キッチンに入ると、整頓されたシンク周りや棚がやたらと目に飛び込んできて。


カウンター越しにきれいに片付けられた部屋を見渡して、またひとつため息をついた。

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