煩悩ラプソディ
第14章 恋も二度目なら/SA
リビングのドアを開けると美味しそうな匂いが部屋に立ち込めていた。
「あ、おかえり!」
キッチンからひょこっと顔を覗かせた相葉さんが、にっと笑ってまた奥へ入っていく。
「お…鍋かぁ」
「うん、寒い日はやっぱこれだよねぇ〜」
弾むような声で言いながら鍋を持ってキッチンから出てきた。
取っ手に巻いていたタオルを蓋に被せると"じゃ〜ん"と言いながらそれを反転させる。
すると、湯気が立ち昇り、ぐつぐつといい音を立てた相葉さん特製キムチ鍋がお目見えした。
「うわ、うまそ…」
「ふふ、うまいよ?先、着替えといでよ」
そう促されて自室で部屋着に着替える。
スーツをハンガーにかけながら、心の中で小さく意を決した。
今日こそは…よし。
リビングに戻ると、相葉さんが冷蔵庫から缶ビールを取り出していた。
テーブルには、小さい器に入ったポテトサラダときんぴらごぼう。
イブの日に食べた相葉さんのポテトサラダがすごく美味しかったって言ったら、週に一回は必ず食卓に並ぶようになった。
そういう小さな優しさとか、気遣いとか。
俺のために、俺を想ってしてくれてることなんだって感じることがたまらなく嬉しくて。
だから、だからこそ。
この気持ちを伝えたい。
俺も、相葉さんを…大事にしたいんだ。
「さっ、食べよ!はい、ビール」
いつもの向かい側に座る相葉さんが、缶ビールのプルタブを開けて俺に寄越す。
「はい、お疲れさまぁ〜」
こつんと缶を合わせて、グイッと煽る。
倣って缶を傾けると、綺麗な喉元が動くのが見えて思わず目を逸らした。
…だめだ。
落ち着けよ、俺。
高鳴る心臓を落ち着かせようと、もう一度ビールを煽った。
湯気の向こう側でいそいそと鍋をつつきながら、ふいに相葉さんが口を開く。