煩悩ラプソディ
第14章 恋も二度目なら/SA
「子どもたちどうだった?
元気よすぎでしょ?」
箸を口元に運びながら目線を上げてふふっと笑う。
「んー、廊下走って看護師さんに怒られてた」
「ははっ、それ昨日もだよ?
かずのやつ潤君のこと引っ張り回してんじゃねえかな」
「いや、潤もああ見えて結構いたずら好きだからなぁ」
もぐもぐと口を動かしながらそう言うと、相葉さんも"そうだね"と一緒に笑ってくれた。
こんな他愛もない会話のおかげか、変な緊張もほぐれてきてあったかい鍋に自然と箸が進む。
しばらくしてテレビのチャンネルを変えようとリモコンを手に取った時、相葉さんが小さく呟いた。
「…ありがと」
微かだったけど、確かに聞こえた声。
「…あ、変えていい?なに観る、」
「ありがと翔ちゃん…
俺たちと、家族になってくれて…」
カタっと静かに箸を置いて伏し目がちにそう告げると、下唇をきゅっと噛み締めた。
予想だにしなかった相葉さんからの言葉に心臓がまたとくとくと鼓動を早めだす。
「俺ね、ほんとに今…
すごく幸せだなって思うんだ。
かずの顔見てるとさ…ほんとにそう思う。
それにさ、こうやって一緒にご飯食べたり、今日あったこと話したり…なんか、懐かしいっていうか…
すごく嬉しいんだよね」
ぽつりぽつりとゆっくり話す相葉さんの表情はとても穏やかで。
その言葉をひとつずつ聴きながら、じんわりと胸に広がっていく熱を感じていた。
「…でもね、」
小さくまた呟くと、相葉さんが顔を上げて俺をまっすぐに見つめた。
「それってね、家族としての幸せだと思うんだ。
うん…もちろんそれも大事なんだけどさ…。
…俺にとってはさ、翔ちゃんは特別なんだ…」
逸れることなく見つめてくるその瞳は、しっかりとした色を帯びていて。
「だからさ…」
高鳴る鼓動が鼓膜の中に響いてる。
…俺も、
俺も…相葉さんが…
「…っ、ごめんっ!やっぱなんでもな、」
「俺もっ…!」
無意識に立ち上がっていた。
がちゃん、と皿が音を立てて箸が床に転がる。
正面の相葉さんは、驚いた顔で俺を見上げていた。