煩悩ラプソディ
第14章 恋も二度目なら/SA
「…俺も、その…
俺もっ!すごく…幸せだし、
すごく…いま、幸せすぎて、その…」
伝えたいことが溢れすぎてうまく言葉にならない。
まっすぐな視線を向ける相葉さんの瞳に促されるように、言葉を探しながら想いを紡いだ。
「ずっと…言いたかったんだけど…なんか、言っちゃいけないんじゃないかって…思ってて…。
俺たちは、家族だから…
家族からのスタートだから…これでいいんだって、思ってたけど…」
ぐつぐつと音を立てる湯気を挟んで、相葉さんの真剣な眼差しが注がれる。
「やっぱり…
俺にとっての相葉さんは、特別だった。
一緒になってからもっと、
そう思うようになって…。
ずっと相葉さんのこと、考えてる日もあって…」
…俺にとって、
相葉さんは…
「…ほんとに、大事なんだ。
家族としても…その…
恋人、としても…」
握った拳にぎゅっと力を込める。
一番、伝えたいこと…
「…俺は…
相葉さんが…好き、です…」
途切れ途切れにそう発したあと、ふっと体の力が抜けてストンと椅子に座り込んだ。
二人の間に流れる沈黙と、なおもぐつぐつ音を鳴らす鍋。
その湯気をぼんやり視界に映していると、その先の影がふっと消えた。
そう思った次の瞬間、腕をぐいっと引き上げられて椅子がガタンと後ろに倒れた。
初めて感じる、そのぬくもり。
相葉さんに、ぎゅっと抱きしめられていた。
突然のことにされるがままで固まる俺の耳に、ぽつり小さい声が届く。
「うれし…」
「……ぇ」
驚きで、吐息のような声しか出なくて。
「…翔ちゃんが…そんな風に思ってたなんて…
俺っ…もう、嬉し…」
肩口からゆっくりと伝わってくるその言葉はだんだんと涙声になっていた。
ぎゅうっと強く抱きしめられて、相葉さんの体温や匂いや鼓動を直に感じる。