煩悩ラプソディ
第14章 恋も二度目なら/SA
この時期にしては暖かい日差しの下、中庭の小さな公園のベンチに座ってお悩み相談中。
「なるほどねぇ…。
確かに相葉さんそういうの鈍そうだもんねぇ…」
背凭れに背を預け、投げ出した足先にスリッパを引っかけた大野先生が青空を仰ぎながらポツリ呟く。
昨日二人で病院に行ったあと、帰宅してからはごくごく通常の夜を過ごした。
いつもと違ったのは、病院から電車で一緒に帰ったことくらいで。
確かに一緒に過ごした時間は長かったけどそれ以上でもそれ以下でもない。
それに昼間妄想した雅紀のあられもない姿がいちいち脳裏にチラついて、顔なんて直視できなかったのは言うまでもなく。
「なんか…中学生みたいだね」
ココア缶をズズっと啜りながら横目で含み笑われる。
そのあまりに的を射た先生の言葉にますます気落ちしてしまう。
ほんとにそうだよな…。
俺ってこんな奥手だったっけ?って自分でも驚いてるくらい。
雅紀を前にすると、気持ちだけが早って体がついてかないんだよな。
だけど…
やっぱり、一歩を踏み出したい。
こんな状態でいつまでもやり過ごせるわけないんだから。
…よし。
「あの…こんなこと先生に聞いていいか分かんないんですけど…」
「うん?」
「その…男同士って…どういう、」
「せっくすのこと?」
「っ!!」
半ば食い気味に答えた先生を前にして、途端に顔に熱が集まるのを自覚する。
そんな俺を見て眼鏡をクイっと上げながらにっこりと微笑んだ。
「知りたい?」
「あ、は…はい、」
思わず姿勢を正して膝に拳を握ると、先生が人差し指でチョイチョイと合図をしてくる。
おずおずと距離を縮めればそっと耳打ちされた。
……
………
「…………えっ?」
「ん?」
「いや、えっ?うっそ…」
「ほんと」
ふふっと笑いながら窺うように見つめられ思わず口を覆った。