煩悩ラプソディ
第2章 僕の目が眩んでるだけ/ON
ふいに眉間に皺を寄せながらにのが身じろいだ。
「ん…」
ゆっくりまばたきをして、不自然な左頬の下の感触を確かめているようだった。
しばらくの間のあと、バッと真上にある俺の顔を見上げる。
慌てて読んでいた雑誌で顔を隠し、にのの視線をシャットアウトした。
「…ねぇ、」
なにも答えられない。
雑誌を持つ手が微かに震えだす。
「…なによ、コレ」
表情は分からないが、明らかに笑いを堪えてるような声で問いかけてくる。
すると、急に目隠しの雑誌を奪われ眼下ににのの顔が現れた。
ニヤニヤしながらじっとりと俺を見上げている。
真っ赤な顔を隠すこともできず、見つめられたまま動けなかった。
「…どしたの?これ」
膝枕から顔を動かすこともないまま、わざとらしく顔を作って小首を傾げて見上げてくる。
そんな仕草ですらいちいち可愛いと思ってしまうあたり、もう俺は終わっている。
「…俺がココにいるから?」
「や…いや…」
「…ココで寝てたから?ココで、」
そう言うと、頭をグリグリと俺の股間に擦りつけてニヤリと口角を上げて。
…なっ、なにしてんのコイツ!!
「ちょっ…!ヤメっ、」
「ねぇ…ヘンな気分になっちゃった?」
顔から火が出そうな俺の焦りを遮るように、扇情的な声と眼差しで見上げながらそう言う。
ズボンの下でムクムクと主張を続ける俺自身は、まるでにのの頭の下で苦しいともがいているようだった。
その感触がダイレクトに伝わったのか、チラッと横目でベルトの方を見遣りクスッと笑う。
「…キツそだね…シたげよっか…?」
眉を下げて切なげな瞳で問いかけるその表情は、からかってるって分かってんのに凄くそそられて。
またも夢の中の間近に迫るにのの顔と今見つめている顔が重なって、瞬間、心臓が大きくドクンと波打った。