煩悩ラプソディ
第14章 恋も二度目なら/SA
ぐっすりと寝入ってしまってずり落ちそうな潤をなんとか抱きかかえ、リビングへと向かう。
かず君もまだ眠そうに目を擦っていて、先にリビングに入って暖房をつけたりと動き回る雅紀を目で追っている。
「おとー、ねむいー…」
潤をソファに下ろしていると、かず君が雅紀の脚にしがみついて顔を埋めていた。
「かず待って、父ちゃんご飯の準備しなきゃ」
「やだー…ねむい…」
ぐりぐりと頭を擦り付けながらしっかりとしがみつくかず君に、雅紀も困ったように眉を下げる。
かず君も潤も、まだまだ甘えたい歳だもんな。
ましてや普段離れて暮らしてるんだから当然だよな…。
胸をきゅっと締め付けられつつ雅紀に視線を送ると、ちょうどこちらを見ていたようで目が合った。
すると、雅紀がかず君の目線にしゃがんで頭を撫でながら口を開く。
「かず、これからはね、父ちゃんがもう一人いるから。
いっぱい甘えていいからね?」
ほら、とかず君の体を俺の方に向けて雅紀がこちらを見上げながら微笑んだ。
あ…
「ほら、パパんとこ行きな?」
頭を撫でてそう促されると、かず君がゆっくりと歩いてきて俺の脚にぽすっとしがみついた。
「…パパ…だっこ…」
小さく消え入りそうな声で見上げながらそう呟くかず君に、思わず泣きそうになるのをぐっと堪える。
「…うん、おいで」
しゃがみながらそう言うと、膝に乗ってぎゅっと胸にしがみついてきた。
「しばらくしたら寝ると思うから」
雅紀が小声でそう告げてキッチンへと入っていく。
胸元で身動ぎながらぼんやり瞬きするかず君の背中を、ぽんぽんと撫で叩く。
…ありがとう、雅紀。
こんなに愛おしいと思える存在を与えてくれて。
何があっても、この子たちを守るから。
…何があっても、雅紀の傍にいるから。
胸元の温かいぬくもりが、心にまでじんわりと染み渡っていくようで。
…しあわせって、こういうことなのかな。