煩悩ラプソディ
第14章 恋も二度目なら/SA
…いやいや、こんなことで照れてどうすんだって話だよな。
潤たちならまだしも俺らもう三十越えたいいおっさんだし。
そうだ、アノことも決めないといけないんだった…
また脳内で大野先生の言葉がリフレインする。
「…大野先生がさ、」
沈黙を破るようにぽつり呟いた雅紀の"大野先生"というワードに思わず顔を上げた。
「潤君からね…相談受けたんだって」
スプーンを口に運びつつ、ちらりとこっちを見ながら続ける。
「かずといると胸がきゅってなるんだけど、どこかおかしいんですか?って…。
それをさ、先生"初恋"だって教えてあげたみたいでさ…」
目は伏せているものの、穏やかな優しい声でぽつりぽつりと話す。
「さっきお風呂でね、かずに聞いてみたんだ。
好きな子とかいる?って」
『ねぇ、かずは好きな子とかいるの?』
『すき?』
『うん、好きな子』
『え〜…いない』
『…ふぅん、そっか』
『じゅんくん』
『ん…?」
『じゅんくんいるもん、だからすきなこいない』
ふふっと笑って、かず君との会話を振り返りながら話す。
「…たぶん、かずもよく分かってないんだと思うけどさ。
けどね、なんか俺…嬉しくなっちゃって。
これってさ、潤君のこと大切な存在って思ってんのかなって…」
言いながら、テレビの前で寄り添うように寝転んでDSをしている小さな二人を見遣る。