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煩悩ラプソディ

第14章 恋も二度目なら/SA






まるで人間カイロのように火照り続ける体と、脳裏に焼き付いてしまった艶やかな寝顔。


勢いのままに横を向いてしまったことを今更ながら後悔する。


そのとき、ふいに動いた空気と一緒に辛うじて聞こえる程のか細い声が耳に届いた。



「…しょうちゃん、」



驚いて顔を向けると、こちらを真っすぐ見てゆっくりと瞬きをする雅紀の視線とぶつかって。


その瞳は僅かに潤んでぼんやりと俺を捉える。



「…寝れないの?」



囁くように静かに洩らす雅紀。
その声に、心臓がどくんと鳴った。


顔を向けたまま何も言えないでいる俺に、視線を外すことなく続ける。



「こっち…向いて、」



同時に伸びてきた手は確かめるように俺の頬に一度触れると、それから後頭部を包むように回された。


思いもよらない雅紀のその言葉と感触に、考える間もなく促されるままに体を向かせる。


耳元を撫でるようにゆっくり動かされる温かい手と、吐息がかかる程の至近距離。


流れる前髪から覗く微睡みがかった瞳で見つめられて、心臓の音が鼓膜に容赦なく響いてくる。



ちょ、やばっ…



「…かっこいい、」



ぽつり呟かれた言葉に、一瞬だけ鼓動が止まったような気がした。



…え?



「…かっこいい…翔ちゃん、」



目元をふっと緩ませて、なおも耳を擽るように手を動かす。


その不規則な刺激に思わず小さく肩を揺らした。



「ん…まさ…、」

「…ねぇ、翔ちゃん…」



遮るようにそう囁かれたあと、くいっと後頭部を引き寄せられて。


鼻先が一瞬触れ合って、そのまま滑るようにゆっくりと唇を塞がれた。

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