煩悩ラプソディ
第14章 恋も二度目なら/SA
突然のことに、頭がまったく追いついてこない。
暗闇の中、直に感じる雅紀の体温と唇の感触だけがリアルで。
頭より先に、体がその事実を思い知らせてくれた。
急に訪れた久しぶりの愛おしい感覚に体中の熱が否応無しに一気に昇り詰める。
やんわりと重ねられた唇。
その柔らかい感触が静かに離れようとして、本能的に押し当て返してしまった。
一瞬雅紀の動きが止まって俺の唇を受け止めている。
触れる先から伝わる熱に、堪らなくなって右手で雅紀の頭をぐっと引き寄せた。
やばいっ…もう、俺…
隙間なく重ねられた唇から一度吐息を逃がそうとした時、今度は雅紀が唇を寄せ舌を滑り込ませてくる。
鼻から息を逃がしながら夢中で追いかけ合う口内。
「…んっ」
「…ふ、は…」
耐えきれず洩れる、お互いの熱い吐息。
甘く蕩けるような感覚に、いっそこのまま溺れてしまいたいと思った。
あぁ、ダメだ…
もう、雅紀っ…
「…パパぁ、」
重なり合った下から小さく聞こえたその声に、一瞬にして現実に引き戻された。
っ、やばっ…!!
咄嗟に顔を離して、口を手で覆いながら上体を起こす。
聞こえてしまうんじゃないかってくらい心臓がどくどく波打っている。
こんなとこでっていう恥ずかしさと、歯止めが利かなくなってしまった自分に情けなさが込み上げてきて。
もしかして…バレた?
体を起こした潤が、目を擦りながらぼんやりと俺の方を向いて呟いた。
「…パパ、おしっこ」
「えっ?あ…あぁ、わかった」
潤のその言葉に内心ホッとする。
良かった…バレてない。
手探りでベッドライトを点けると、暗闇にぼやっとオレンジ色が広がった。
急な明るさに目をぎゅっと瞑る潤を抱きかかえて、ベッドから降りる。
ちらっと雅紀の方に目を遣ると、顔が隠れるくらい布団を被せて丸まっていた。
あぁもう…ごめん、雅紀!
できることなら俺もそうしたい、と心の中で雅紀に同調しながら急いで潤をトイレへ連れて行った。