煩悩ラプソディ
第14章 恋も二度目なら/SA
なんとかギリギリセーフで間に合った。
未だぼんやりしている潤を促しトイレを出ると、雅紀が眠るかず君を抱っこして自分の部屋のドアを開けようとしていた。
こちらに気付くと赤い顔で視線を彷徨わせながら口を開く。
「…ぁ、かずも寝ちゃったし、もうこっちで寝るね…」
ぐったりしてずり落ちそうなかず君を抱え直して、ちらっと目線を上げた。
「あ、うん…」
その瞳と唇につい目がいってしまって、無意識にさっきの余韻が残る口元を隠しながら答える。
あまりに鮮明に思い起こせる感覚。
よく見えなかった分、触れたすべての場所がその熱や感触を覚えていて。
雅紀に見つめられるだけで、また体温が上がってきそうだった。
「じゃ…おやすみ、」
ドアを開けながら、少し潤んだ瞳の雅紀が小さくそう告げる。
「うん…おやすみ」
ちらっと目を合わせて赤くなる顔を見られないように逸らした。
ドアを開けて、ふらふらと中へ入る潤のあとに一歩を出すと。
急に左腕をぐいっと引かれたと思ったら、次の瞬間には唇に柔らかい感触が訪れて。
長い睫毛が伏し目がちに揺れながら離れていくのが、見開いてしまった視界に映る。
「ごめ…おやすみっ…」
頬を染めて目も合わせずにそう言い残すと、パタンとドアが閉められた。