煩悩ラプソディ
第2章 僕の目が眩んでるだけ/ON
「…も、痛いって!」
振り向くと、左手で右手首をさすりながら眉を下げて窺うようにこっちを見つめる瞳。
「もう…そんな怒んなよ…」
チラッと上目で一瞥して目を逸らしながら口を尖らせる。
にのは俺がからかわれて怒ってると思っているらしく、罰の悪そうな顔で廊下をジッと見つめてる。
「…ごめんって…ね、戻ろ?行こ?」
沈黙に耐えられなくなったのか、ポツリとそう呟き俺の手を取って反転して歩き出そうとした。
その手を、反射的に引っ張って引き寄せた。
よろけたにのが俺の胸に倒れてくるのをぎゅっと抱きとめる。
「えっ!?ちょ、なに…」
焦るにのにお構いなくぎゅうっと音が鳴るくらいの力で抱き締める。
にのと密着した全ての部分が一瞬にして熱さを取り戻した。
…もちろん、中心も例外なく。
俺ほんとなにやってんだろ…
でも、もう止まんないんだよ。
お前に触りたい。
お前を…
「ちょっと…人来るからっ」
身を捩って逃げようとするにのを更に強く抱き締めると、鼻から空気を思いっきり吸ってふうっと長く吐き出した。
「…ごめん。俺もうダメだ」
「…え?は?」
にのの体を離し、腕を取ってトイレの一番奥の個室へと引っ張っていく。
「やめっ…だから謝ってんじゃん!」
抵抗する声と共に、にのが腕を振り解こうとするのを更に強い力で制して個室に押し込んだ。
鍵をかけてドアに背を向ける。
狭いトイレの中で、大人の男が二人。
お互いの息遣いがすぐ近くで聞こえる。
「…ちょっ、なに…?」
にのは明らかに怯えている。
見つめる瞳が揺れて潤みだした。