煩悩ラプソディ
第15章 或いはそんな休日/AN
目の前の不自然な画に驚きを隠せぬまま、しゃがみ込んでにのに抱きついている優太に問いかける。
「優太ぁ?このおじさん好きなの?」
「うん、すき!」
クルッと振り向いて満面の笑みで答えてくれた。
優太とはコイツが産まれてから一度、もっとちっちゃい時会った以来だけどこんな満面の笑顔を見せたのは初めてだった。
「え、なんで?どこが?」
「どこがってあなた…」
メンバーとはいえ本人を目の前にしてかなり失礼な質問だけど。
優太にあんな顔をされてちょっと悔しかったせいもあり、顔を近づけながらまた問いかけた。
すると優太は頬をぷくっと膨らませて、首を傾げながら呟く。
「ん〜…わかんない…」
「理由なんてないよなー?
ほら、好きなんだって、俺のこと」
にのは優太を自分の懐から剥がすように抱え上げて、膝の上に乗せながらドヤ顔で俺たちを見上げた。
なんだかとっても嬉しそうなにのが無性に腹立たしく、同時に優太を取られてしまうんじゃないかという焦燥感に駆られて。
「じゃ、じゃあさ優太、まぁくんとにのちゃんとどっちが好き?」
期待と、ほんのちょっとの不安。
当然俺だろうと言い聞かせてあからさまにニコニコと微笑む。
「えー…にのちゃん!」
またもニッコニコで優太はにのの胸にしがみつき、照れたように頬を朱く染めた。
「うわぁ〜!優太ぁ〜!」
床になだれ込んでオーバーリアクションを取りつつ、頭上から聞こえる笑い声を耳に入れないよう頭を抱え込んだ。
嘘だろ!?
嘘だと言ってくれ!
なんで身内の俺がにのに負けんの!?
半ベソ状態でおずおずと顔を上げると、優太は相変わらずにのの膝の上でキャッキャと笑っていて。
にのもにので満更でもない様子で目尻を下げて笑っていた。
…ぜってー納得いかねぇ!くそぉ!
こうして、拭いきれない敗北感を味わいつつ、俺と優太との一癖も二癖もありそうな二日間が幕を開けたのだった。
幕切れ悪っ…。