煩悩ラプソディ
第15章 或いはそんな休日/AN
スタジオでの収録を終え楽屋に戻ると、ソファテーブルにマネージャーと居る優太が目に入った。
人見知りな筈なのに、どうやらマネージャーとも打ち解けたようで。
ニコニコしながら持ってきたぬり絵をぐちゃぐちゃ塗っている優太を、デレ顔で見つめる彼に声をかける。
「ごめんね、ありがと。
すっかりなついちゃってんね」
「はい、いやぁ優太くん可愛いですね」
そう言われると、なぜか自分が褒められてるみたいで自然に頬も弛む。
「まぁくん、みてー」
"はい"と伸ばされた手の先に、クレヨンで塗り伸ばしたキャラクターの絵が。
「お、すっごい上手じゃん!見せて」
「…あ!」
差し出そうとした手が空を掻き、俺の脇をタタッとすり抜けていく優太の行き先を目で追うと。
「にのちゃぁん!」
「…っ!」
楽屋に戻ってきたにのに向かっていき、勢いよく脚にボスっと抱きついた。
ポケットに手を入れていたにのは、突然の衝撃に驚きつつも嬉しそうにそれを受け止める。
…なんだよ、デレデレしちゃってさ。
優太は俺が連れてきたんだからね?
まるでそこだけお花畑みたいな雰囲気の二人を見て近づけないオーラをふつふつと感じる。
「相葉くん明日オフだっけ?
だから優太引き受けたの?」
「大変だねぇ、休みなのに」
そんなメルヘンな世界を恨めしく見つめる俺に、翔ちゃんがシャツを脱ぎながら、リーダーはコーヒーを淹れながら問いかけてきた。
「ん、まぁね…。
じゃなかったら無理だもん」
今日だって事務所に頼み込んで何とかオッケーもらったし。
…みんなには黙ってたけど。
「どっか連れてってあげんの?」
松潤が持参のタッパーを取り出してテーブルに並べながら続ける。
「平日だからさ、遊園地とかいんじゃない?
人少ないだろうし」
と、他人事のように提案して何食わぬ顔で食事を始めた。
「や、遊園地とか絶対ヤバイでしょ!
それに俺一人とか無理だってば…」
と言いながら視線を送れば、みんなして一斉に目を逸らした。