煩悩ラプソディ
第15章 或いはそんな休日/AN
「ほんっとごめんっ!ごめんなさい!」
最敬礼で平謝りする俺に見向きもせずに、足を投げ出し俯いてベンチに座っているにの。
チラッとすぐ近くにそびえ立つ時計に目を遣り、ふぅと小さくため息をひとつ。
目深に帽子を被ってるせいか上手くその表情が読み取れず、言葉を慎重に探しながら様子を窺っていると。
「はぁ…あぶなかった。
俺が遅刻するとこだったわ」
そう言って含み笑いながら立ち上がった。
…は?え?
「相葉さんもしかしたら遅刻するかなって思って。
俺もさっき来たの。だから五分五分ね」
ニコっと可愛く笑ってそう言い放ち、すぐに脚元の優太と戯れ始めた。
…はぁ!?
も〜なんだよ!焦ったじゃんか!
けど良かったー…
せっかくの遊園地なのにこんなスタートじゃ…
俺、仲間外れ確実だもんな。
そうじゃなくてもこのメンバーじゃ俺のポジション危ぶまれるし。
相変わらずにのが大好きな優太は、ご機嫌でキャッキャとじゃれ合っている。
「…じゃ、行きますか」
言いながら帽子の鍔をくいっと上げて下から見上げられると、何だか無性に照れくさくなってきた。
だって…成人男性2人と幼児が遊園地ではしゃいでる光景なんて、はたから見たら絶対ワケありだと思われる。
「ねぇ…俺たち浮いてない?」
「んー、少なくとも普通じゃないよね」
「バレないかな…」
「何言ってんのよ今更」
曇った顔の俺を見てふふっと笑うにの。
実はコイツ…
俺よりも今日の遊園地楽しみだったりして…。
半歩前を行くにのに、過剰な期待を勝手に募らせて一人顔を綻ばせていると。
「ねー!おもちゃー!」
一人でトタトタと走り出した優太が、少し先の売店の入口からこちらに向かって叫んでいた。
お世辞にも流行っているとは言い難い、いかにもお土産屋といったような店内。
平日ということもあり客も疎らで、さほど広くはないこの空間では十分すぎる程に俺たちは目立つ存在となっていた。
さしてヤル気がある風には見えない店員を意識しながら、各々店内を物色し始める。