煩悩ラプソディ
第15章 或いはそんな休日/AN
それからはただがむしゃらに優太の影を捜して走った。
小さな子どもを見かける度に目を見張っては肩を落とすの繰り返しで。
捜せば捜すほど不安と焦燥感が胸を掻き立て、ふいに頭を過る最悪の事態を打ちのめすように園内を隈なく見て走る。
優太っ…どこだよ?
どこ行ったの…?
辺りに目を配りながら走っていると、ふいにベンチの側に立つ背の高い時計が目に入り、優太とはぐれて数時間も経っていることに気付いた。
にの…
まだ見つかんないのかな…
見つかったら連絡が来るはずだから、きっとまだ捜し回ってるんだろう。
正直、これだけ走り回っても見つからないってことは…本当に考えたくない結果があり得ることも受け止めなきゃいけないの?
背中に張り付く冷えたシャツの感触に顔をしかめる余裕すらなく、一瞬の放心の後に襲うのは確信を持ち始める結末。
やだよ…
にの…どうしよ…
俯き唇を噛み締めて目頭に込み上げてくる熱を拭おうと腕を上げた時、上着のポケットにふと違和感を覚えた。
何だか妙に軽すぎる。
あれ?俺…
そのままポケットを探ってジーンズの後ろまで、体中を粗方叩いて確認してみる。
「…ぁ」
脳裏に、今朝出かける間際の映像がふいに蘇った。
ケータイ、カバンの中だ…!!
普段ほとんど身につけているのに、昨日に限ってはカバンに入れていた。
急いでいたせいかケータイを入れ込んでいたこともすっかり忘れてて、ダッシュに邪魔なカバンは置いてきたんだった。
やばい…
これじゃ見つけても電話できねぇじゃん!
なぜこういう時に限って余計な不運が続くんだろうか。
いや、自分の腑甲斐なさは運なんかじゃ片付けられない。
今に取り返しのつかない事にだって成り得るんだから。
辛うじて立ってはいたけど、心はしゃがみ込んで泣きたい気分だった。
だけど、そんなことしてる場合じゃない。
とにかく今は…優太を捜さなきゃ。