煩悩ラプソディ
第2章 僕の目が眩んでるだけ/ON
…なにやってんだ、俺。
ただあんな夢見ただけなのに。
こんなとこににの連れ込んで、
自分の想いぶつけて、
…キスまでして。
…自分勝手にも、程があんだろ。
目線の先のにのは、未だ俯いたままでギュッと拳を握ったまま動かない。
俺はコイツを、傷つけてしまった…。
「にの、ごめん…」
絞り出した声が掠れる。
ほんと最低だな…俺。
その時、にのが小さく息を吐いた。
そして次の瞬間、バチンという音とともに両頬に衝撃が走り。
「いっ…!?」
両頬をにのの両手で挟まれたかと思うと、勢いよく唇がぶつかってきた。
えっ…!?
なに…
思わずよろけてドアに凭れる。
突然のことにワケが分からず混乱する俺に、なおもグイッと唇を押し当ててくるにの。
それは、お世辞にも甘いキスとは言い難い勢い任せのくちづけだった。
ふいににのの唇が離れ、両手で頬を挟んだままおでこをコツっとつけてきて。
目も合わせられないくらい近い距離にあるにのの顔は、おでこから伝わる熱さで火照ってるのが分かる。
「…ずるいんだよ、アンタ…」
にのがポツリと呟いた。
「言うだけ言ってごめんとかさ…なんなのよ…
俺は…俺の気持ちは、どうなんのよ…」
小さく消え入りそうな声は少し震えていた。
「…にの」
「俺はずっと…
アンタとこうしたいって思ってたよ…
ずっと…」
震える声でそう言うと、両手を緩めて頬を優しく包んでくれた。
そしておでこから顔を離し、首を少し傾げてしっとりと唇を合わせてくる。
さっきとは違う、優しくて穏やかなキス。
「…すきなんだよ…」
一度唇を離して目を合わせてそう言うと、再び顔を傾けて静かに唇を重ねてきた。