煩悩ラプソディ
第15章 或いはそんな休日/AN
一定の心地良い揺れに体を委ね、目深に被った帽子から覗く小さく開いた口が今日一日の疲れを物語っていた。
無駄な労力を使わせてしまった手前言えたことじゃないけど。
にのと優太は結局、俺抜きで遊園地を満喫したわけで。
「…俺も観覧車乗りたかったなぁ…」
聞こえてないのは分かってるけど、ちょっと悔しかったので小声でボソッと呟いてみた。
俺、今日なんにも楽しいことしてないや…
むしろストレスになってないか、これ…。
泥のように眠るにのをよそに、飽きもせず窓の外を眺める優太を見ながらほんの小さくため息を吐く。
「優太、今日楽しかった?」
背もたれに体を預け、目線だけを斜め下に送って問いかける。
「うん!たのしかったー」
ヘラッと笑う優太の笑顔は偽りのない心の底からのもので。
きっと俺の捜索はオマケで、二人でいっぱい乗り物乗ったりアイスとか食べたりしたんだろうな…。
俺の居ないとこで、俺が描いたイメージを勝手に成し遂げちゃったんだ…。
さっきは優太を捜すので精一杯でそれどころじゃなかったけど、今頃になって今日の遊園地プランに不慮の事故で参加できなかったことに後悔が募る。
「でね、おうまさんにのってねー」
それから優太は、今日のにのとのランデブーの全てを俺に話してくれて。
嬉しそうに話す顔に、複雑な心境になりつつも相槌を打つ。
「うん 、そっか…
あ、観覧車は?楽しかった?」
目を輝かせて必死に伝えてくる優太につられてこちらも笑顔になり、何気なく訊ねた言葉。
その言葉に一瞬、優太の表情が曇った。
「ん?…優太?」
みるみる涙目になって俯く様子に驚いて、顔を覗き込んで問いかける。