煩悩ラプソディ
第19章 原稿用紙でラブレター/AN
電話越しで罵り合いながらも、なかなか胸の高鳴りが落ち着かない。
まさか、こんな近くに味方がいたなんて。
今まで大ちゃんにしか打ち明けてなかったこの気持ち。
それを、同じ目線で共有できる仲間がいたなんて。
…こんなに心強いことってないよな。
『お前知らねぇだろうけど松潤って意外と、』
「ねぇ翔ちゃん、」
段々とヒートアップしてきた翔ちゃんを遮り、ベッドから降りて机に近付く。
「俺さ…こんなの叶わない恋だってずっと思ってたんだよね。
…けどさ、そうじゃないかもって今は思うんだ」
『ぇ…それって、」
「うん、伝えようと思ってる。
ぶつけてみようかなって…」
机の上の原稿用紙を手に取り、まっさらなそれを見つめながら言葉を続けた。
「どうなるかなんて分かんないけどさ…
ただ、にのちゃんに気持ちを届けたいんだ」
この原稿用紙には収まりきれないくらいの、溢れ出しそうな俺の気持ちを。
「…翔ちゃんは、どうするの?」
『えっ?いや…俺は、』
「翔ちゃんも伝えようよ。
俺ね、今すっごい自信湧いてきてんの。
翔ちゃんも同じなんだって嬉しくて」
『…うん、まぁ…正直びっくりしたけどな。
けど…うん、確かに心強いわ』
ははっと笑う翔ちゃんにつられて、俺もふふっと笑みをこぼす。
「…よし!じゃあどっちが先に告れるか勝負しよ!」
『はぁ?なんだそれ、』
「負けたほう卒業まで毎日ジュースおごり!」
『は?バッカ、ふざけんな!』
我ながらいい提案と思いつつ、笑いながらベッドにボスっと腰掛ける。
『告んのに勝負とかなしだろ!』
「え?翔ちゃんもしかして自信ないの!?」
『はぁ?あ、ありますー!あるに決まってますー!』
「ぐふふ!ならやってみやがれっ!」
「おいお兄!うるせぇぞ!」
足音と共にいきなり開いたドアから文句だけを吐き捨てられ、すぐにバン!と激しくドアが閉められて。
『…ふは、大丈夫か?』
「ふふ、弟に怒られちゃった…」
それから少しだけお互いの好きな人のことを話して、なんか妙に恥ずかしくなったから"続きはまた明日"と言って電話を切った。
改めて机に向かうとさっきよりは肩の力も抜けていて。
頭の中ににのちゃんの笑顔を浮かべながら、思いのままにペンを走らせた。