煩悩ラプソディ
第1章 それはひみつのプロローグ/ON
ー最近、大野さんが気になる。
気になる、というか…
なんかあの人を目で追ってしまう。
顔が見たい。
隣に居たい。
どこかに触れてたい。
そんなのは、今までだってずっとしてきたことなのに。
なんか違うんだよな。
なんていうか…愛おしい。
そう思った瞬間、また顔に熱が集まってきた。
頭の先の方でアチッとかぼんやり聞こえるけど、視線を送れるわけもなくグッと眉間に皺を寄せた。
カップを両手に持ってこちらに歩いてきて、あたりまえのように隣の席に座る。
周りに座るとこなんていくらでもあるのに。
そんな"あたりまえ"が、最近は心臓に悪い。
部屋にはボリュームを最小にしてあるゲームの電子音と、コーヒーを啜る音しか存在してなくて。
大野さんはあくびをしたり伸びをしたりして、何をするでもなくぼんやりとコーヒーを飲んでいる。
…ねぇ、なに考えてんの?
さっきから同じ顔を作って液晶を睨んでるけど内容なんか全然入ってこない。
この感覚はなんなんだろう。
あなたのことを考えると、込み上げてくる熱いもの。
俺は…
俺の頭ん中はあなたでいっぱいなんだよ。