煩悩ラプソディ
第22章 1+1/ON
…いいなって、何が?
「…なに、なんなのそれ」
首を傾げて更に顔を覗き込もうとすると、ふいに横顔がこちらを振り向いた。
「なんか…こうゆうのいいなって思ったんだよ。
…一緒に住んでるみたいで」
最後は逸らすように目を伏せたけど、眉を下げてまっすぐに俺を見てそう告げた瞳はなんとなく潤んでいて。
「にのがうちに居たらこんなかなって…
なんか…考えちゃったんだよ」
そう言って、俯いたまま苦笑いで口を噤んだ。
…ちょっと待って。
え、それってさ…
そうゆうこと?
「ねぇ、それってさ…プロポーズ?」
「えっ?」
ボソッと口を開くと、弾かれたように大野さんが顔を上げて。
膝に顎を乗せたままじっと覗き込めば、たちまちキョロキョロと目が泳ぎだす。
「えっ?いや…えっ?あの、えっ?」
あからさまに赤くなった顔で同じことを連発している。
…いや動揺しすぎだろ。
アゴしゃくれてんじゃん。
「そう捉えていいですね?」
「えっ?あ…」
「いいのね?」
「あ……うん、」
じっと見つめると、気圧された大野さんは間抜けな顔のまま小さく頷いた。
…ちょっと強引すぎたかな。
けど、この人にはこのくらいが丁度いいんだ。
俺だっていつまでも強がってらんないのよ。
…ほんと、やっとだよ。
すると、目の前の間抜け顔が急に我に返ったようにハッとして俺を見た。
「俺…ちゃんと言った?今」
「は?なにを…?」
「お前に言った?ちゃんと、」
「だからなに…」
「俺と一緒になってって」
「…っ!」
真顔でまっすぐ見つめられてそんなこと言われたら。
とすん、と思わず尻もちをついてしまった。
自分から仕掛けたくせに、丸腰の相手から正拳突きで返り討ちを喰らったみたいで。
顔に熱が集まるのが分かる。
たぶん俺、耳まで真っ赤だ。
「…いいの?俺と、」
尚もまっすぐ見つめてくる大野さんの瞳に、何も言えなくなってただただ赤い顔で小さく頷くだけ。
すると、そんな俺の反応を見て安心したのかいつものふにゃっとした笑顔を向けて。