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完全に触れあった肩。


寄り添うように密着したそのしっとりとした感触に、今にも逆上せてしまいそうで。


お互いに前を向いたまま距離だけを詰めた状態で、また沈黙が辺りを支配する。


今回の旅行でどうしてもやりたかったこと。


こうしていとも簡単に実現できたけど、いざそうゆう状況になるとどうにも体が強張ってしまい。



本当は、雅紀に触れたくて仕方ない。


体の奥から湧き出てくるような愛おしさを、ぶつけたくて仕方ない。


その先を…


＂雅紀とのその先＂に、近付きたいんだ。



心の中でそう覚悟を決めて顔を上げた時、目を伏せた横顔が小さく俺の名前を呼んだ。


「ねぇ翔ちゃんさ…」


視線は膝の上で組まれた指先に向いていて、落ち着かな気に動く指が水面から時折顔を覗かせる。


「…あのね、ちょっと…聞いてみたいことがあるんだけどさ、」


たどたどしく続ける雅紀の頬は、心なしかどんどん上気していくようにも見えて。


「…うん？」

「うん…あのね、俺達ってさ…＂まだ＂じゃん…？」

「…まだ？」

「うん…まだでしょ…？」


チラリと一度だけこちらに目を遣って、すぐに逸らした雅紀。



まだ…


って、あっ…！



その意味が分かり、一気に全身の血流がざわめきだす。


俺の反応を見た雅紀が、更に顔を赤くして膝をぐっと抱え込んだ。


ぱしゃん、と波立った水面が鎮まるのと同時に、またぽつりと雅紀から声が届いて。


「…翔ちゃんはさ、どうしたい…？」

「…え、」

「俺とのこと…どうしたい？」


その問いの意味を理解するのに、そう時間はかからなかった。


ただ、まさか雅紀からそんなことを言われるなんて思ってもみなかったから。


一瞬頭が真っ白になりかけたけど、恥ずかしそうに目を伏せて俺の返事を待つその横顔が、どうしようもなく愛おしくて。



俺は…



黙ったままの俺に痺れを切らしたのか、思い切ってこちらに顔を向けた雅紀に、俺も思い切ってそのまま唇を重ねてみた。


「…っ、」


ちゃぷん、と跳ねたお湯がゆらゆらと波打つのを体で感じる。


そっと離せば、目を伏せた長い睫毛が揺れていて。


数秒だったけど、重ねられた唇からは柔らかな雅紀の感触が余韻となって残り。



「…ぁ、ごめん、」

「…ううん、」