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煩悩ラプソディ

第24章 半径3mの幸福論/SA






「ん…わかった、」


こくんと頷いたその瞳は、全てを受け入れたかのような色で揺らいでいて。


一瞬目を伏せてから、通った鼻筋の先の色っぽい唇が動いた。


「ね、もっかい…キス、してくれる…?」


頬を上気させてそんなセリフを言われたら、今まで抑えてきた欲望は容易く解放されてしまい。


この非現実的なシチュエーションも相まって、込み上げる感情のままに体が動き出した。


雅紀の綺麗な輪郭をなぞって顔を上向かせると、ふっくらした唇にちゅっと音を立てて口付ける。


一度離して目線を合わせれば、恥ずかしそうに目を伏せるその耳元にそっと囁く。


「…好きだよ、雅紀…」


また顔を傾けて、今度は深く重ね合わせた。


「んっ…」


零れた吐息にも似た声に、どくんと熱が込み上がってくる。


完全なる外なのに、この静けさと夜の闇が不思議な空間を創り出していて。


更にもくもくと上がる湯気に包まれながら、体の芯まで火照っていく。


息継ぎをしつつ何度もキスを繰り返す内、お互いの吐息が混ざり合い。


「はぁっ…翔ちゃ、好き…」

「んっ…はぁっ…俺もっ、」


檜の淵に預けた雅紀の体に、いつの間にか覆い被さるような体勢で夢中で唇を味わって。


熱い口内を下で辿れば、追いかけるように雅紀がそれに応え、息をするのも忘れそうになる。


その正面からの密着の最中、無意識に触れ合った部分にお互いの体がぴくりと反応した。


「んぁっ…」

「あっ…」


俺と雅紀のお互いの自身は、完全にその形を成していて。


ゆらゆらと揺らめく水面下、腰に巻いていたタオル越しに触れ合う猛りを自覚する。


途端に赤くなって俺を見上げる雅紀。


眉根を寄せて潤ませた瞳のまま、噛んだ唇を隠すように口元に手を当てて。


そんな雅紀の仕草に残されていた理性も全て持っていかれ、今までにない感覚に襲われた。



なんだこれ…


俺、もう…



「…雅紀、」

「へっ…?」

「ごめん…俺抑えらんねぇかも…」


口元に手を当てたままの、無防備な雅紀の首筋に顔を埋める。


「ぁっ…んっ、」


晒されていた綺麗な首筋にちゅっと口付ければ、くすぐったいように身を捩って。


耳たぶから鎖骨までその綺麗なラインに沿って唇を這わせると、その度に雅紀から耐えるような声が漏れた。

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