煩悩ラプソディ
第24章 半径3mの幸福論/SA
静けさの中に、雅紀と俺の息遣いだけが響く。
手の中に収まりきらなかった白濁は、その引き締まった腹や太腿に飛沫してゆっくりと伝っている。
くったりと脱力した体は、全体重を俺にかけてきていて。
預けられるものが何もない俺は、空いた手を後ろについて支えるしかなかった。
湯けむりの中、この何とも刺激的な光景に頭が沸いて仕方がない。
こんな野外で、こんな淫らなことをしてしまうなんて…
それに、雅紀を気持ち良くできたという勝手な満足感で、更に気持ちが昂る。
触れられてもいないのに、しっかりと芯を保つ自身を雅紀の背中の下で自覚して。
達する寸前の俺を呼ぶ雅紀の声、
より加重をかけてきた強張った体、
弾けるように溢れた、手の中の熱い雅紀自身。
さっきの感覚の全てがリフレインして、勝手に中心が疼きだす。
「…ん、」
脱力していた体をゆっくりと起こしつつ、雅紀が長い吐息を漏らした。
振り返ったその顔は恥ずかしそうに赤らんで、ぎゅっと噛んだ下唇がやけに艶めいていて。
「…ごめ、イっちゃった…」
小さく消え入りそうな声で、そんなことを言うから。
またどくんと体の奥に熱が込み上げてくる。
…雅紀、もう俺っ…、
そんな姿を目の当たりにし、体中の血が泡立ちかけてふと我に返った。
"この先"って…
そうだ、この先に進む為には…
ふいに、大野先生のあの言葉が脳裏を掠める。
あれから一応、知識として頭に入れてはいたものの。
いくら懸命に想像したって、あんなところにこんなものが…って、全くイメージが湧かなかったんだ。
俺は…
本当に、できるのか…?
ここにきて、急に現実に引き戻されたような。
体は火照って仕方がないというのに。
頭が、理性が、俺の欲求にブレーキをかける。
ふいに目の前の背中がゆっくりと動き、至近距離で向かい合う形になり。
絶えることなく立ち昇ってくる湯気に包まれ、雅紀の上気した顔がすぐ近くに現れた。
正面から見る引き締まった綺麗な体には、吐きだした白濁がまだ残っていて。
達したばかりだというのに微かに反応している雅紀自身にも、否が応でも目を奪われてしまい。
その光景に息を呑み何も言えないでいると、雅紀から遠慮がちに声が漏れた。