煩悩ラプソディ
第24章 半径3mの幸福論/SA
目を合わせたまま、人差し指に力を込めて少しだけ押し込むと。
「ぅっ…」
眉を顰めて掠れた声が漏れ、回されていた腕にもきゅっと力が入る。
「…大丈夫?」
「うんっ…いい、から…」
また切なげに微笑むその顔に、一瞬気持ちがグラつきそうになったけど。
意を決して、ゆっくりと指を押し込んでいった。
「んんっ…!くっ、はぁっ…」
とめどなく漏れる雅紀の声は、完全に痛みを我慢していて。
それに、水圧に逆らいながら押し進めていく指の感覚も、未知の体験。
少しでも痛みを感じないように、とゆっくり指を動かしても、どこをどうしたらいいのかさっぱり分からない。
だけど。
「はぁっ…翔ちゃんっ…」
拠り所に縋るように俺に抱き着く雅紀は、無意識なのか絶えず俺の名前を呼んでいて。
耳元に熱い吐息がかかり、肩まで湯に浸かっている体には内からも外からも十分に火照りを助長させた。
内壁を辿りながら奥へと進めていった時、掠めた指に雅紀の体がぴくんと跳ねる。
「あっ…」
「……ん?」
明らかに今までとは違う反応に、思わず動かしていた指を止めて。
何も言わない雅紀を不思議に思いつつも、また同じように指を動かすと。
「あっ…!」
一段と上がったその声は静けさの中に消えていき、代わりにぎゅっとしがみ付く強さが加わった。
なんだ?ここ…
もしかして、ここって…
集めた過小な情報の中、押さえるべきポイントのことが思い出され。
「…雅紀、ここなの?」
「んぁっ…だめっ、」
くいっと指を動かせば、また体を跳ねさせて反応する雅紀。
すると、かくんと体がずれて浮かせていた腰が沈み。
「あぁっ…!」
弾みで人差し指の根元まで押し込まれ、掠めていたそこにダイレクトに届いた。
『翔ちゃんっ…!』としがみ付いて震える体に、どくどくと興奮が煽られ。
その一点に集中して指を動かせば、跳ねる体が水面を波立たせて滴が飛沫する。
絶えず声を上げる雅紀の反応を体で感じ、じんわりと中心が芯を持ちだして。
密着した雅紀自身ともお互いの腹の間で擦れ合い、沸き上がる熱気と蒸気に今にも逆上せそうになった。