煩悩ラプソディ
第24章 半径3mの幸福論/SA
「んぁっ、もうっ…しょうちゃ、イっクっ…!」
埋め込んだ中でそのポイントをぐいっと突き上げた時、同時に左手の感触が変わり雅紀から悲痛にも似た声が漏れた。
『ぅっ…』と小さな呻き声が聞こえたと思った次の瞬間。
信じられないような重さが、体全体に圧し掛かってきて。
「うぉっ…!?」
思わずざぶんと湯の中に顔が浸かってしまい、溺れかけながら必死に体を起こすと。
完全に脱力した状態の雅紀が、俺に全体重をかけてなだれ込んできていた。
「…ちょ、雅紀…?大丈夫か…?」
締め付けられて思うように抜けなかった指はようやく自由になり、ぐったりした雅紀をゆっくりと抱き起こして檜の淵に凭れる。
余程の快感だったのか、問いかけには答えぬまま余韻に浸るように黙っていて。
「…気持ち良かった?」
小さく呟いて頬を撫でれば、やけに熱を持っている。
そういえば、胸元にぴったりくっつく反対の頬からもかなりの熱が伝わってきていた。
薄暗がりではっきりは見えないけど、雅紀の体は全身が赤く染まって更に燃えるように熱くて。
燃えるように、熱くて…
…ん?
「…雅紀?」
反応のない雅紀の顔を改めて覗き込むと、眉間に皺を寄せてきつく目を閉じている。
半開きになった唇はカサつき、上手く空気を取り込めずに浅い呼吸を繰り返していて。
明らかに射精後の倦怠感とは違うその症状に、一気に現実に引き戻された。
「っ、雅紀!?あっ…!」
もう一度呼びかけた時、赤い顔の雅紀の鼻からツーっと血が流れてきて。
えっ、うそだろっ…!?
「ちょ、おい!雅紀っ!」
「ん…はぁっ…しょ、ちゃん…」
抱き込んだまま肩を揺らしつつ名前を呼べば、微かに口を開いて絞り出すようにそう応えた。
意識があることを確認して、慌てて浴槽から引き上げる。
完全に逆上せあがった雅紀の体は、まさに茹でダコ状態で。
マジかっ…
なんてことしちまったんだよ俺はっ…!
調子に乗ってこんなとこで…
俺はバカかっ…!
こうなった以上、もう形振りなんか構ってられない。
ムードも何もぶち壊して、雅紀を部屋に運ぶ為に素っ裸のままあくせくと動き回った。