煩悩ラプソディ
第5章 愛情注ぐ理由はいらない/ON
「…あれからずっと考えてたんだよ、俺。
にののどこが好きなんだろって」
赤い顔のままチラッと上を見ると、一点を見つめてポツリポツリと話し出す横顔が近くにあって。
そのまま大野さんの胸にぴったり顔を預けたままの姿勢で、おとなしくすることにした。
「したらさ、なんか…よく分かんないんだよ、実際。
一緒に居すぎてさ…なんて言っていいか分かんないの、これ」
大野さんの心臓の音を聴きながら、ゆっくり話すその声に耳を傾ける。
「けどさ、いっつも気になんの。
考えてんだよね、いっつも、俺。
分かんないけど…なんか…
お前の全部たまんなく好きなんだよ」
言い終えたと同時に、またギュッと抱きしめられる。
大野さんの心臓も、ドクドク鳴ってる。
なにそれ…
そんなのもう…
嬉しすぎんじゃん…。
「ね…ここ来て?」
抱きしめた腕の力が弱まり俺の両脇を抱えられたかと思うと、グイッと上に引き上げられて大野さんの膝の上に乗せられた。
太ももに跨って向き合う形になり、急に恥ずかしくなって目を伏せる。
「…にの、キスして?」
酒のせいか潤んだ目で見上げてくるその顔を見て、また心臓の鼓動が早まって体が熱くなる。
大野さんの両手が俺の頬を撫ぜて包み込み、ゆっくり引き寄せられた。
唇が重なると、俺の中の熱が疼きだすのが分かった。
唇を割られて、舌を入れられる。
初めて感じる、大野さんの味。
ほんのりビールの苦さもあるけど、それはとても甘かった。