煩悩ラプソディ
第5章 愛情注ぐ理由はいらない/ON
「ぁ…別に、今日じゃなくていいけど、」
なにも言わない俺に、取り繕うようにそう続けた。
…あぁ、だからか。
急に来たと思ったら明らかにソワソワして、ビール一気飲みなんかしちゃって。
最初から、覚悟決めてきたってことね。
お酒の力借りちゃうあたり、あなたらしくてちょっと笑えるけど。
「…ぇ、おかしかった?」
思わずふふ、とこぼしてしまった笑みに、不思議そうな顔で見上げる大野さんがたまらなく愛おしくなった。
「ううん…うん、俺も…
あなたに抱かれたい」
大野さんのお腹に両手をそっと置いて、まっすぐ見つめてそう伝えた。
普段なら、こんな恥ずかしいセリフとてもじゃないけど言えない。
けど今は。
目の前にいるこの人の、不器用だけどまっすぐな想いに応えずにはいられなかった。
お互いどうしようもなく恥ずかしくて、ふふふっと笑ってごまかす。
「…じゃあとりあえず、シャワー浴びてくる?」
急に大野さんが真面目な顔でドラマみたいなセリフを言うもんだから、思わず吹き出して仰け反って笑った。
弾みでバランスを崩して後ろに落ちそうになり、慌てて大野さんの腕を掴む。
大野さんもびっくりした顔で俺の腕を引っ張って、また引き寄せた。
「あっぶな…」
「ごめん…」
ぎゅうっと抱きしめられる度に、
体が密着する度に、
俺の中心は容易く熱を帯びだす。
それはまた、大野さんも同じのようで。