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煩悩ラプソディ

第31章 未だに勢力まだ拡大中/AON






今日は一本撮りだったから比較的早い時間。


現場で一旦別れてウチにやってきた二人は、早々にくつろぎモードに入ってて。


何も要らないって言ったのに、出来たての唐揚げを買ってきてくれた相葉ちゃん。


キッチンでそれを盛り付けつつ、リビングのソファから聞こえてくる会話に耳を傾ける。



「あんなのもう食えないって」

「俺が食うの!お前さっきもう食ったろ」

「くは、また最後まで残ったもんね」

「あれさ、絶対当たったと思ったの!」

「もうさ、あれよ。相葉さん残るのテレビの前の人たち飽きてるよ多分」

「てゆうかさ、言っとくけどあれ俺の正解だからな?
俺のおかげでお前、」

「ねー大野さんまだー?」


下を向いてるけど、二人の声だけでどんな顔して言ってんのか分かる。


そのやり取りにニヤけていると、にのから急に呼ばれて目を上げた。


ソファを背凭れにしてラグに足を投げ出している二人。


そこそこ広いその空間に当たり前のように隣同士で座ってて。



いやまぁそうだな。


こんなのはいつものこと。


なんだけどさ…


今日はそうゆう些細なことにも反応しちまうんだ。


ネットで見たあいつらと重なる部分を見つける度、勝手にニヤけてしまう俺がいる。


俺、今日…ちゃんとできっかな。



「うわ、ちょー美味そう!」


いつの間にかキッチンへ入りこんできた相葉ちゃんに急に横から覗き込まれ。


「あ、すごい」


続いて、相葉ちゃんの後ろから腕を掴みつつ顔を覗かせるにの。



…あ。
こいつらがくっついてんの間近で見ると…


ふふっ…



「最近ね、けっこう作ってんの。簡単だよ」

「これアヒージョだよね?こんなのも作れんだ」

「それ中なに入ってんすか」


にのが相葉ちゃんの横からずいっと鍋を覗き込んでくる。


「ムール貝とホタテと…」

「火通ってるよ。それでもだめ?」

「んー…」


にのに顔を向けて優しく問いかける相葉ちゃんに、不安そうにチラリと目を合わせるにの。



そう、いつだって相葉ちゃんはにののこと考えてんだ。


その言葉の内には『大丈夫だよ』って言い聞かせる意味も含まれてて。


にのもにので『相葉くんが言うなら大丈夫かも』って思ってんだきっと。


ふふ…
わざと貝入れて良かったな。

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