煩悩ラプソディ
第31章 未だに勢力まだ拡大中/AON
ローテーブルに並べた酒と料理たち。
和やかな空気と床暖房のあったかさも手伝って、ふわふわしてかなり良い気分。
向かいには相変わらずの二人が居るし。
「ちょ、唐揚げ取って」
「お前まだ食うの?」
「まだって俺は空腹なんだよ!肉食わせろっ」
「っ、あーもう危ないって!」
にのの前を横切って伸ばした相葉ちゃんの腕がグラスに当たり、危うくビールが零れそうになって。
へへっと笑いながら『ごめん』なんて謝ってる相葉ちゃんを、眉間に皺を寄せながらも優しく見つめるにののその眼差し。
さっきからにのが相葉ちゃんの動作をよく見てて、さり気なく皿やグラスを移動したりしてんだ。
今までそんな気にしてなかったけど、思い返せば飲みの席では必ずと言っていいほど相葉ちゃんの隣にはにのが居る。
せっかちで自由人な相葉ちゃんの横でこっそり世話を焼いてんだな。
それが当たり前だろうから、もしかしたら本人たちも気付いてないかも知んねぇけど。
かと思えば。
「せっかくなんだから食べなよこれ」
「えー…」
俺が作った海鮮アヒージョを勧める相葉ちゃんに怪訝そうな顔を向けるにの。
「ホタテならいけんじゃない?」
そう言って箸でホタテを摘まむとにのの口まで持っていく。
躊躇いつつ小さく開けた口に強引にホタテを押し込み、その様子を窺ってる。
「うまいな?うまいだろ?」
「…ん、んまい」
半笑いでもぐもぐ口を動かすにのに、目尻に皺を作って満面の笑顔を向ける相葉ちゃん。
こうやってにのを見る相葉ちゃんってすげぇいい顔してんだよな。
これは前から思ってたことだけど。
にののことすげぇ好きなんだろうなぁって。
他とおんなじように笑いかけてるつもりかも知んねぇけどさ、俺には分かる。
ふふ…
なんかいいよなぁ、こいつら。
『良かったね大ちゃん、にの美味しいって』と笑いかけてくる相葉ちゃんに、俺もつられて笑顔になった。