煩悩ラプソディ
第31章 未だに勢力まだ拡大中/AON
酒もほぼ尽きて、テーブルの上の料理も無くなった頃。
完全にソファに寄り掛かって、赤くなった顔でぼんやりとテレビを観ている二人。
いつもの"俺たち"なら、ぼちぼち次の準備に取り掛かる頃合いだ。
俺たちは酒が入ってる時しかヤったことがない。
だから、最中の記憶が曖昧っつーのもしょーがないワケで。
にのも相葉ちゃんも、ちびちびとグラスを傾けながら俺の合図を待っている様子。
でもな。
今日は違うんだよ。
俺が混ざっちゃ意味がない。
今日は…
ほんとうのあいつらを見てやんだから。
「あ~…めっちゃねみぃ…」
言いながらあくびを一つかまし、俺の後ろにあるソファにゆっくりよじ登る。
「…わりぃけどちょっと寝るわ…」
ソファに横になりながら対面の二人にそう投げかければ、揃って『えっ』という顔になり。
その驚いた顔を見届けて、腕を枕にして瞼を閉じた。
いよいよこっからが本番。
目瞑ってるからうっかり寝ちまわないようにしないと。
このままの流れだと、あいつらは今日も三人でって思ってたはず。
思いもよらない展開にちょっと動揺してんだろ。
けどそれも多分、時間の問題。
その気で来てんだから…
そう簡単には引けねぇだろ?
しかも俺んちで、俺が寝てるって状況なんて…
興奮しないワケねぇもんな。
沈黙の中、小さなテレビの音だけが部屋に漂ってて。
コトッとグラスがテーブルに置かれた音と同時に、静かな会話が聞こえてきた。
「明日早いの?」
「んーん、昼から。相葉さんは?」
「俺も昼からマナブ。夜はマナブ会」
「え、明日だっけ?」
「うん。え、にのも飲みあるからって言ってたじゃん」
「あるけど」
「明日何の飲み会?誰と行くの?」
「リズムくん」
「升野さん?と誰?」
「…リズムくん」
「え、二人?二人で?」
「うん」
「……ふぅん」
あ、今の間。
相葉ちゃん明らかに動揺してんな。
見てなくてもほんと分かりやすいな、相変わらず。
「…なに?だめ?」
「…いや別に」
「別にって顔じゃないけどそれ」
「……」
「…っ、んっ…」
少しの間のあと、漏れるように聞こえたにのの吐息。
おっ…!
始まったか!