煩悩ラプソディ
第32章 あいつがライバル/AN
「いやだから…優太とにので二人で…」
「は?何でよ。相葉さんも一緒に決まってんじゃん」
当然でしょ、とでも言うような顔で笑いながらそう告げられて。
…えっ、そうなの!?
「…なに、ちょっと待って。もしかしてお前俺が二人っきりで会いたいっつってると思ってた?」
目を丸くして指を差しながら面白そうに訊いてくるけど。
いや思ってたよ!
思うじゃんフツー!
あんなに優太優太言われたらさ、俺なんて邪魔者でしかねぇじゃん!
「くははっ!なわけないでしょ。優太と二人で何すんのよ俺」
まだメイク前のつるんとした前髪に隠れて、細めた目元が覗くようにこちらを見た。
そんなふいに見せる幼さや仕草に、これまで何度どきどきさせられてきたか。
待てよ…
これってさ…
遠回しに『相葉くんに会いたい』って言ってるようなもんだよね?
ってことでいいんだよな?
ちょっと待って…
ちょー嬉しいんだけど!
にのから休みの日に会いたいって言われるなんて…
やっべぇ嬉しすぎるっ…!!
「ね、聞いといてよ優太のこと。
あと相葉さんの休みと調整してさ」
「…あぁ、うん」
「…え、泣いてんの?」
「っ、泣いてねぇよっ」
不覚にも、嬉しすぎて涙腺がゆるゆるになってしまってて。
そんな俺を目敏く指摘したにのの声で、周りに居たメンバーにもいじられることとなり。
にのとリーダーとメイクに呼ばれるまでそれは永遠続くハメになった。
***
思いの外、早くその日は訪れた。
ちょうど翌週の水曜のマナブロケが休みになったことで、にのとの休みがタイミング良く合って。
優太の母親に連絡を入れたらすぐに返事が返ってきた。
『その日は予定を入れてたけど、優太に訊いたらにのちゃんに会いたいって。なのでよろしくね』
"にのちゃんに会いたい"か…
俺は?
ねぇ優太、俺は?
…まぁいい。
優太とはライバルだから。
相手が幼児だからって俺は手加減なんかしない。
だって、現時点でかなり差をつけられてんのは百も承知なんだ。
けどな、俺と優太じゃキャリアが違うんだよ。
こっちは20年も一緒に居るんだ。
…優太なんかに負けてたまるかってんだ。