煩悩ラプソディ
第32章 あいつがライバル/AN
あんなにギラギラしてた気持ちも、久し振りに会った優太を目の当たりにすればやや和らいだような気がして。
実家で落ち合い優太を連れて東京へ戻る車中、後部座席のチャイルドシートに座る優太が口を開いた。
「まぁくん、にのちゃんは?」
「んー?今から迎えに行くよー」
「むかえいく?どこ?」
「にのちゃんのおうち」
バックミラー越しに目を合わせつつ、何の気なしにそう答えると。
「え!にのちゃんのおうち!?
ゆうたいく!いくー!」
途端に目を輝かせてジタバタしだした優太。
そんな顔が子どもの頃の俺とそっくりで、ついぷっと吹き出してしまって。
そういえばちょっと見ない内にまた少し大きくなったんじゃないかな。
このぐらいの子どもは成長が早いって聞くけど、優太もあっという間にお兄ちゃんになってくんだろうなぁ…
ふいに、優太の成長した姿が脳裏に浮かんだ。
その容姿は紛れもなく俺そのもので。
背格好も顔も、全てが俺の生き写しのような優太。
そんな優太が満面の笑みで『にのちゃん!』なんて言いながらにのに駆け寄っていく。
にのも『おぉ、おっきくなったな優太!』なんつって優太の肩を抱いたりして。
優太『にのちゃん、実は俺…子どもの頃からにのちゃんが好きだったんだ』
にの『実は俺も…優太のこと頭からずっと離れなくて…』
優太『え、にのちゃん…まぁくんより俺を選んでくれるの?』
にの『当たり前だろ…相葉さんより…優太だよ」
優太『にのちゃん…』
にの『優太…』
待てぇーーーーーーーっ!!!
何やってんの!
何やってんのにのっ!
つーか優太っ!
お前何やってんだこら!
はぁ…
一瞬でもこんな心臓に悪い妄想するんじゃなかった…
溜息を吐いてチラッとバックミラーに視線を送ると、さっきまであんなにはしゃいでいた優太はしっかりと寝息を立てていて。
そんな天使のような寝顔に若干怯みそうになるも、どこまでも余裕な優太に勝手に闘争心を再燃させ。
現状マイナスイメージしかない頭をふるふると振って、
戦場とも言うべくにのの家へと車を走らせた。